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北区の水を守る浄水場じょうすいじょうと、神戸一大きなダムに潜入せんにゅう

水道局の裏側うらがわ体験ツアー①「千苅せんがり浄水場・ダム見学ツアー」

市内の小学生に向けた神戸市水道局の夏の恒例こうれいイベント「水道局の裏側体験ツアー」が、今年も開催かいさいされました。場所は、北区にある千苅浄水場と、神戸で最も大きな水道専用のダム・千苅貯水池です。

朝起きて歯をみがいたり、お料理を作ったり、お風呂に入ったり。蛇口じゃぐちをひねると当たり前のように出てくるキレイな水道水は毎日の生活に欠かせない存在ですが、どうやってみなさんのもとに届くのでしょうか?蛇口の向こうに広がる世界を、このレポートで一緒に体感してみてください。

 

北区の飲み水をになう「千苅浄水場」

2024年7月30日、北区の岡場おかば駅からマイクロバスに乗って千苅浄水場へ。夏休みに入ったばかりの小学生と保護者のみなさんが集まりました。

見学の前に、まずは職員から神戸の水道や千苅浄水場について簡単な紹介しょうかいをしました。

神戸に初めて水道が誕生したのは、明治33年(1900年)にさかのぼります。最初の浄水場は、兵庫区にある奥平野おくひらの浄水場でした。ここ千苅浄水場が誕生したのは、昭和42年(1967年)のこと。それよりずいぶん前の大正8年(1919年)に作られた千苅ダムの水を飲み水に変えて、北区の北部を中心としたエリアに水を届けています。

ところで実はこのダム、神戸で一番大きなダムとしても有名なんです。その迫力はくりょくから、「映画のロケ地にも使われたこともあるんですよ」という職員の言葉に、参加者のみなさんも興味津々きょうみしんしんのようす。

それではさっそく、千苅浄水場へ移動しましょう。

 

ゴクゴク飲めるキレイな水になるまでの、3時間の“水の旅”

水源地の水を約3時間で安心して飲める水に生まれ変わらせる「急速ろ過方式」を取り入れた千苅浄水場の近年一日あたりの浄水処理量は平均約5万トン。水がどんどんきれいに生まれ変わっていく仕組みを、順にのぞいてみました。

原水の汚れを取り除くためにはたくさんのステップが必要!

「この水の色、どう?飲めそうな色かな?この色がどう変わっていくのか、よく注目してみてね。」

職員の声かけで最初に目にしたのは、着水井ちゃくすいせいと呼ばれる場所にある水。これは貯水池からやってきたばかりの水道水の元となる水(原水)なので、にごっているのが一目でわかりますね。もちろんそのまま飲むことはできません。

その後、混和池こんわちという場所に水を移して、濁りを取るための薬を加えてミキサーのようにぐるぐるかき混ぜます。すると水に溶け込んだ汚れが目に見えるかたまりになって、取り除きやすくなるんですよ。

次にやってきたのは、フロック形成池けいせいち。フロックとは、濁りや汚れの塊のこと。

「4つ池があるけど、それぞれどうちがうかわかるかな?」

 

じっくりと観察してみると、水中で動いている大きな羽の速度が池によって少し違うのがわかりました。

フロック形成池の役割は、混和池からの水をかき混ぜ続けることで小さなフロック同士をくっつけて塊をさらに大きくすること。よりゆっくりとした速度でかき混ぜる池では、目に見えないほど小さなサイズの濁りも取り残すことなく大きな塊にすることができるんです。

 

砂のフィルターでもっとキレイな水に変身

続く沈殿池ちんでんちでは大きな塊になったフロックを池の底に沈殿ちんでんさせて、上澄うわずみの水のみを取り出します。

「だいぶ濁りがなくなってキレイになってきたかな?でも、実はまだ目に見えない汚れがあるんです。」

ここまでの工程で取り除ききれなかった小さな汚れは、ろ過池におまかせ。ここでは石炭などを原料とするアンスラサイトと砂や砂利の層がフィルターのようになり、細かな水の汚れを取り除いてくれるんです。その仕組みを小さな模型にしたものを参加者のみなさんと一緒に確認しました。

こうしてキレイになった水は、塩素で消毒された後に浄水池じょうすいちへ。地域の使用量の変化に応じてポンプで配水池はいすいちへ水を送り出して、ようやくみなさんのもとへ届きます。

配水池を経由することで、一日の時間帯によって水道水の使用量が大きく変化したとしても、いつでもちょうどいい圧力で蛇口から水が出るようになるんですよ。

 

水質試験室でプロの仕事を見学

浄水場の見学が終わると、この日は特別に水質試験室にも潜入してみました。水質試験室とは、その名の通り水道水となる水の質を検査する場所です。

先ほど、混和池という場所では濁りを取るための薬を加えてミキサーのように混ぜることでフロックを作るとお話しました。実はそこで使う薬の量は毎日決まった量ではなく、その日の水質に合わせて調整する必要があるんです。その量を調べるための機械がこちら。

この機械はいわば混和池やフロック形成池を再現したもの。水道水の元となる原水をビーカーに入れて、薬の量を少しずつ変えた8つのパターンを用意。「ジャーテスト」という名前が付けられています。

そこでジャーテストのプロと一緒に、8つのうちどの番号がフロックを作るのにちょうどいい薬の量なのか実験してみました。1分間ほどかき混ぜたあとの様子をじっくりと観察してみると、④~⑦のビーカーのみフロックができました。なるべく薬の量は最小限に抑えつつ、しっかりとフロックが形成されたのは⑥と⑦でした。

安心して飲める水道水のために、日々こうしてさまざまな検査が行われているんですね。

また、千苅浄水場にあるポンプなどの機械を監視や操作する中央監視室にも足を運びました。ここで浄水場内の機械を運転したり停止したり、浄水場で使用する薬の量を調整することができます。

みなさんのもとへ届く水道水の安心と安全を、たくさんの人が支えていることがわかりますね。

 

いよいよ神戸で一番大きなダムへ!

ここからまた車で移動して、千苅貯水池に向かいました。普段ふだん入ることのできないダムの上まではちょっとした登山のようでしたが、みんなで頑張って歩きました。

水量がある時は、この斜面しゃめんから滝のように水が流れています。ダムの上の通路を目指して歩きます。

 

 

高さ42m、長さ106mの大きなダム。池に貯められる水の量は1,124万m3で、なんと神戸市役所1号館の約59杯分もの水を貯めることができます。

ダムの水は千苅浄水場だけではなく、上ヶ原浄水場にも送ることができます。現在は上ヶ原浄水場を新しくする工事をしているため送っていませんが、工事が終われば作られた水は神戸の市街地に届けられます。

北区の水道水を作る浄水場と、神戸で一番大きな水道専用の貯水池ちょすいちへ潜入したツアー。身近な水道水が安心して飲めるキレイな水になるまでの仕組みや、巨大なダムの様子はいかがでしたか?

暮らす人が多く面積も広大な北区の大切な水は、こうして守られているのですね。