浄水場の中に、ひみつのトンネルがあった!?
水道局の裏側体験ツアー①奥平野浄水場を探検してみよう
神戸市内の小中学生を対象に、2022年7月27日より全4回開催された「水道局の裏側探検ツアー」。日常生活には欠かせない存在だけど、実はよく知らない。そんな水道水の蛇口の向こうに広がる、知られていない世界を覗くことができるツアーです。普段は足を踏み入れることのできない場所や、安心してゴクゴク飲めるほどきれいな水にするためのお仕事など、参加者のみなさんも興味津々だった内容。当日の空気感を味わってもらえるレポートにまとめて、各回に分けてお届けします。
神戸の中心地にある「奥平野浄水場」
第一回目の開催地となったのは奥平野浄水場。明治33年(1900年)に創設したこの浄水場によって、神戸に初めて水道が誕生しました。
神戸市全体の水量を調整する管理センターや、水をきれいにするための浄水施設、中央区や兵庫区の一部に水を送る配水池など、広い敷地内には重要な建物がたくさん。この日は事務所で神戸の水道について簡単な説明を聞いた後、車に乗って山の方へ移動。「トンネル監査坑」へ向かいました。
まるで映画の世界! トンネルの正体は?
いよいよここからがお楽しみ。山の麓で、周囲はうっそうと茂る木々に囲まれています。実は、水道局の職員でも誰もが足を踏み入れられるわけではない監査坑。真夏の明るい空から一変、トンネル内は薄暗く気温も20℃とひんやり。ちょっぴり緊張してしまう空気感が漂っています。
少しモヤがかかった様子はまるで映画に出てくる秘密基地のよう。約150mの直線のトンネルを、足元に気をつけながらゆっくりと歩きました。レールは現在使われていませんが、昔は資材を運ぶために実際に使われていたんですよ。
階段を降りた先を指差す職員。「あの先は暗く段差もありとても危ないエリアです。ご案内できるのは入り口までですが、一緒に少し覗いてみましょう」。
現れたのは、直径約135cmもの2本の巨大なパイプ。実はこの中には水道水が流れており、長田・須磨・垂水など神戸の西エリアに向けて水を届けているのです。
一日で流れる水の量は、約20万m3。これは約30万軒の家庭が一日に使用するぐらいの量です。丸一日以上かけて山を越える旅を経て、自宅や学校などの蛇口から出る水道水として、みなさんの元へとやってきます。
薄暗いトンネルの正体。それは、大切な水が流れるパイプに異常がないか確認し、管理する場所のことだったのです。
蛇口からの水圧にも、坂の街ならではの工夫が
監査坑を後にして、帰りの坂道は歩きながら戻ることに。海が広がる神戸らしい美しい景色も見えました。
神戸は東西に長く、高さ900mを超える六甲山の麓にある坂の多い街。実はこの独特の地形によって、神戸市の配水池事情は他の都市とはまた異なった特徴があるのです。
配水池とは、浄水処理された水を溜めておく場所のこと。浄水場からそのまま家庭に届くのではなく配水池を経由することによって、1日の時間帯による水道水の使用量の変化にもかかわらず、いつでも適切な圧力で蛇口から水が出てきます。
この芝生の下にあるのは、「低層配水池」と呼ばれる施設。これは海抜0〜30mにある建物などに向けて水を送るためのものです。中層配水池では海抜31〜60m、高層配水池では海抜61〜90mの地域に向けて、土地の高さごとに水を送るエリアを決めているのが神戸水道の特徴です。
また、地震や津波などの大規模災害時に水が止まったとしても、配水池などにある水を利用できるようになっています。阪神淡路大震災での経験や教訓にもとづいて、皆さんがもしもの時でも生活に必要な水道水を確保できるよう、しっかりと取り組んでいるんです。
水質の検査係は、金魚!?
管理センターへ戻ってくると、金魚の水槽が。「実は僕たちだけではなくこの金魚たちも、水の安全をチェックしてくれているんですよ」。
元気に動き回っているのは、水源地からきた原水に問題がない証拠。こうして体を張って(?)、重大な任務を果たしてくれています。
また、水槽のちょうど正面にあるのがオペレーター室。ここでは38時間後までの水道使用量をコンピューターで予想し、どのエリアにどれくらい水が必要なのかを見極めて水道水を各地へ送っているのです。例えば西区であればここから水が届くまでに1日以上はかかるため、未来の水量を事前に調整しておく必要があるのですね。
大きな水漏れなどもここで発見することができ、そのような緊急時は深夜であったとしても調査を行います。
たくさんの人が関わりながら、今日も神戸の水道水はみなさんのもとへ運ばれています。