まるで水道管のドクター!? 漏水修理にかけつけるプロの仕事
水道局の裏側体験ツアー①水道のヒミツ!プロの仕事をのぞいてみよう
神戸市内の小中学生に向けて開催し、昨年も大好評だった「水道局の裏側体験ツアー」。今年は全3回に分けて、前回の水質試験所ツアーに加え、2つの新しい内容をお届けしました。
ツアーでは普段は見ることのできない地下深くの施設に潜入したり、水のプロが使う機械を実際に使ってみたり。私たちの日常には欠かせないけれど実はよく知らない、水道水の蛇口の向こうに広がる世界を、一緒にのぞいてみませんか?
広〜い北区の水漏れを解決する、大切な仕事
この日の開催地は、水道局北部水道管理事務所。「実はここは、北区の道路下の水道管修理をすべて引き受けている場所でもあるんです。さて、もしも水道管から水が漏れていたら、その場所を突き止めるにはどうしたらいいでしょうか? そして、どうやって水を止めればいいでしょうか? 今日は実際に水漏れが起こったと想定して、その答えを一緒に探してみましょう」と職員。
さっそくガレージに設置した即席の“漏水現場”へ向かい、水漏れが起こったときの対応を体験してみました。
水道管を通った水は、おうちまでどのようにして届くの?
テントの前に用意されているのは一般のご家庭に設置されている蛇口の模型で、本来は地中に設置されているものです。奥に見える黒く太い配水管(配水池から家の近くまで水を届ける管)は本来道路の下に埋まっているものなのですが、そこから細い給水管(配水管から分かれて、おうちまで水を届ける管)を通って各家庭まで届けられていることがわかります。
「これが水道のメーターボックスです。もしもおうちで水漏れが起こったら、この中にある副止水栓を回すとおうちの中の水を止めることができます。また、水道料金がいつもより増えた場合はどこかで漏水が発生している可能性があるので、一度おうちの中の蛇口などを全て止めたうえで、なおもメーターが回っていないか点検してみてくださいね」
水道局では、2か月に1度は検針でメーターを診ています。異常があればビラをポストに入れていますよ。
水漏れの主な原因は、古い水道管の劣化によって管が破損したり、バルプをつなぐゴムパッキンが劣化したりすること。神戸市水道局では古い水道管を新しいものに少しずつ交換する工事をしています。
また、「毎日のように漏水修理に出向いています」との職員の言葉には、参加者のみなさんも驚き。漏水量やその場所によって修理の優先度が変わるため、場合によっては1ヶ月待ち(!)になってしまうこともあるんです。
電柱を超える高さまで噴き出す水も人の手で対処
水道管を使って、配水管の水漏れとその対処を再現してみました。この迫力、まずはぜひ動画でご覧ください。
動画でご覧いただいたのは、木栓を打ち込み、固定するための金具を被せてボルトで締めるという昔ながらの手法です。でもこれはあくまで、穴が小さい場合の対処法。これでも水漏れのレベル的には最小のケースなんです!
現場では電柱の高さを超えるくらいの勢いの水が噴き出すことも多く、冷静に状況を見極めながら、なるべく断水せずに処置できる方法を選ぶことが大切です。水を止めてしまったら、多くの人の生活に支障が出てしまいますからね。
木栓が使えない場合では、こうした大きな補修金具を使います。水道管を切ることなく水を止めることができるんですよ。二人がかりのスピーディーな動きで、あっという間に漏水が直りました。
もちろん場合によって水道管の水を止めて作業をしないといけないときは、なるべく早い復旧を考えて作業を行いますので、ご協力をお願いします。
どんな規模の漏水も、いつだってそれを修理するのは人の力。水は人の暮らしと密接に関わっているため、漏水修理はとても大切な仕事なんです。
水漏れが起こっている場所はどうやってわかるの?
ここで気になるのは、水道管は道路の奥深くに埋まっているのに、水が漏れている場所をどうやって突き止めたらいいの? ということ。
答えは「人の耳」。水の音をよく聞いて、漏水している場所を確かめるんです。意外にも(?)、とってもアナログですよね。
(音聴棒を使用)
まるでお医者さんの聴診器のように音を確かめる機械を漏水探知機と言います。精度の高い電子音調棒という機械もあり、実際に水が漏れる音を聞いてみました。
(電子音聴棒を使用)
(漏水探知機を使用)
チョロチョロと水が流れる音が聞こえたり、その音がだんだん遠くなったり…。こうして水の音を振動で捉えることで、水が漏れている場所との距離を探ります。まるで水道管のドクターのように診察している気分ですよね。
水道の情報が詰まったプロの機械を触ってみよう!
マッピングルームに移動しました。この部屋には水道管に関する膨大なデータがパソコンにギュッと詰まっているんです。漏水が起きたと連絡を受けたら修理に出向く前にまずは漏水が起きている場所の図面をチェックします。
自宅で漏水したと仮定して、実際にプロの機械を動かしてみました。
まずは住所を検索すると、自宅の水栓番号、給水管の材質や口径、自宅前の配水管の口径や材質・継ぎ手、どの配水池から水が届いているのかといったあらゆる情報を調べることができます。どれも修理のための大切なデータです。
坂の多い神戸では高低差を利用して水を送っているので、配水池は建物よりも高い場所に。あまりにも水圧が高いと作業が大変になるため、修理に必要な人数も変わってくる…なんていうことも。この神戸の街ならではのエピソードかもしれません。
最後に、災害時に水を汲める給水マップをみんなで確認してこの日のツアーは終了しました。
水漏れなどの日常的なケアはもちろん、神戸市では阪神・淡路大震災の教訓を生かして、大規模な震災が起きた場合には通常の配水をストップして飲料水を確保できる「緊急遮断弁設置配水池」や「大容量貯水槽」を整備しています。
みんなの命に関わる水。安心して暮らせるために、毎日の対策も万一の対策も欠かせませんね。