地下を走る、4,866kmの“謎”に迫る!
水道局の裏側体験ツアー②水道管工事ミステリーツアー
「いつも通るあの道で、そういえば水道管の工事をしていたなぁ…」。
こんな風に、自宅や学校、買い物といった生活エリアのどこかで工事が行われているところを見たり、その光景をなんとなく覚えていたりする人は多いかもしれませんね。
ところで、神戸の水道管(配水管のみ)の長さはどれくらいだと思いますか?
全部つなぐとなんと総延長4,866km! (令和2年度末時点) この長さを換算すると、およそ神戸からシンガポールくらいまで。そして、実は老朽化が進んでいます。つまり水道管工事は、市民のみなさんの暮らしや、災害時には命にも関わるとても大切な作業でもあるのですね。
そうは言っても水道管は地下に張り巡らされているため、目に見えないだけに“謎”、ですよね? そこで第2回目となる水道局の裏側ツアーは「水道管工事ミステリーツアー」と題して、実際の工事現場の様子や、神戸市における水道管取り替え工事のリアルに迫りました。
震災後約25年経った今も続く、耐震化工事
そもそも、なぜ水道管の工事が必要なのでしょうか? それは、古くなった管から水が漏れてしまったり、年月が経った管には錆があったりすることがあるから。そして、地震に強い「耐震管」に取り替えることもとても重要な理由の一つなのです。
平成7年1月に発生した、阪神・淡路大震災。神戸市内では家屋の倒壊だけではなく水道管も大きな被害を受け、各地で断水が発生。復旧に3カ月近くかかったところもあり、水を求めて長蛇の列ができました。避難所を訪れて給水活動にあたった神戸市水道局員もいます。
こうした経験から、神戸市では震災の2年後から、市内全域における水道管の耐震化工事をスタートしました。古い水道管から「耐震管」と呼ばれる地震に強い新しい水道管に取り替えるこの工事は、実は震災から25年近く経った今なお続いています。
それでもなお、耐震化が完了した神戸市内の水道管は全体の40%ほど。水道管の総延長は4,866kmもあると記事の冒頭でお伝えしましたが、 1年間で工事を進められるのは40kmほど(令和2年度末時点)。交通規制や、断水に伴う住民の方々の理解を進めながら進める必要があるために、地道な作業となっています。しかも、1kmの水道管を交換するのにかかる費用はおよそ1.7億円! 規模もとても大きい工事であることがわかるかと思います。
そしてこの日は、実際に水道管工事の見学へ。古い水道管を撤去し、新しい水道管を設置する工程を見に行きました。
100年後まで現役? 耐震管の全貌を目撃!
訪れたのは、地下鉄県庁前駅近くの道路です。すでに工事は進み、しゃがむと大人もすっぽりと隠れてしまうほどの深い溝が掘られていました。
こちらが新しく取り替える耐震管です。ポリエチレンのカバーを巻いて地下に埋めるのは、錆びにくくするための工夫です。
管の長さ、物にもよりますが5mほど。挿し口と受け口を合わせて接合していきます。
こうして3本を継ぎ合わせて、この日の工事で進んだのは約15m。少しずつ、着実に作業を進めています。
また、道路はまっすぐなものばかりではありません。この写真のような曲げ配管に書かれた数字はその角度などを表したもの。どのくらい差し込めば良いのかという目印もついています。
「この耐震管は、100年近く耐久性があるとされています。今日取り替えたものは、もうこの先目にすることはないかもしれませんね」と職員。
100年後もきっと、この地下から水を届けてくれる水道管。その取り替えの瞬間を目にできたと思うと、なんだか不思議な気持ちになりますね。
役目を終えた50年前の水道管を発見!
そしてこの日は特別に、古い水道管を撤去する様子も見学しました。
まずは取り出しやすくするために、古い水道管を切断します。
短く切断した後は機械で持ち上げて運びます。
「1972」と書かれている通り、こちらはなんと50年前に設置された水道管。まるで樹木のように見えますが、少し土を取り除くと、先ほどの耐震管と比べ表面がざらざらしていて、錆がついている箇所もありました。
「今までお疲れ様でした」の気持ちで、みんなで代替わりの瞬間を見届けました。
何気なく使っている水には、さまざまな人が関わっている
現場から戻った後は、ミニサイズの耐震管を触ってみたり、水道にまつわるあらゆる道具を触ってみたり。水道のことをさらに身近に感じてもらいました。
災害時の断水を再び起こさないためにも、毎日のように行われている水道管工事。普段は目にできない地下の“謎”を解いてみると、水道にはさまざまな人々の力や知恵が集まっていることがわかりました。