安心して飲める水道水に生まれ変わる、3時間の“水の旅”
水道局の裏側体験ツアー④浄水場のバックヤードツアー
水道に関わる人や仕事を深堀りしてきた水道局の裏側ツアーもいよいよこれが最終回。第4回目は、水源地の水を約3時間で安心して飲める水に生まれ変わらせる「急速ろ過方式」を取り入れた、奥平野浄水場が舞台です。
きれいな水を作るための最終工程でもある浄水場では、一体どのようなことが行われているのでしょうか? 今回も通常は入ることのできないエリアへ潜入した、「浄水場のバックヤードツアー」をお楽しみください。
奥平野浄水場の、巨大な浄水施設へ
兵庫区にある奥平野浄水場。広大な敷地には「急速ろ過池」が4池あり、一日あたりの浄水能力は最大で約6万トンにもなります。
浄水施設へ向かう道では、こんなものも目にしましたよ。
これは調整池と呼ばれるもの。水道水を一時的に貯水する場所で、なんと1万トンもの水を貯めることができるのです。写真からも、その大きさが伝わりますか?
そしていよいよ、浄水施設へ。東西に約100mも続く施設で水がどんどんきれいに生まれ変わっていく仕組みを、上から順に覗いてみました。
原水の汚れを取り除く下準備
布引貯水池などの水源地や川の水(原水)はそのまま飲むことはできません。そこで、まずは水の濁りを取るための下準備が必要となります。最初のステップが、この着水井と呼ばれる場所。
ここは、貯水池から地下のパイプを通って原水が最初に浄水場に送られてくる場所。水の色は少し濁っていますね。
着水井の隣にあるのが混和池です。原水をキレイにするために、ここでは濁りを取るための薬(ポリ塩化アルミニウム)を入れて、まるで洗濯機のようにぐるぐると激しくかき混ぜています。こうすることで水に溶け込んだ濁り成分が目に見える塊になり、取り除きやすくなっていくのです。
大きな濁りは一度沈めて取り除く!
次にやってきたのは、フロック形成池。フロックとは、水の濁り成分が集まった小さな塊のこと。混和池からの水をゆっくりとかき混ぜることによって、小さなフロック同士をくっつけて徐々に大きくしていくのがこの場所の役割です。
ちなみにフロック形成池は2つに分かれていて、もう一つはさらにゆっくりとした速度でかき混ぜています。こうすることで、目に見えないほど小さなサイズの濁りも取り残すことなく、大きな塊にすることができます。
こうして大きな塊となったフロックを取り除くために、次は塊を池の底に沈殿させるため「沈殿池」というエリアへ進みます。
フロック形成池で作られた大きな濁りの塊をスムーズに沈殿させるために、この池にはちょっとした工夫があります。模型を使って職員がその仕組みを説明しました。
「この銀色の砂のようなものがフロックだとしたら…。そのまま沈殿させるのを待つ(左側)よりも傾斜した板を使う(右側)方が、フロックが素早く底に滑り落ちていくのがわかりますか?」。
効率よく汚れを底へ沈めるために、沈殿池にはこの模型のような傾斜板がたくさん設置されています。こうして、きれいな上澄みの水だけがろ過池へ送られるのですね。
ちなみに、底に溜まった汚れは定期的に集められて、排水処理施設へ送られていますよ。
ろ過池でさらにきれいな水へ
いよいよ最終ステップであるろ過池へやって来ました。
ろ過池では、この模型のように砂や砂利の層を通して水がろ過されています。石炭などを原料とするアンスラサイト、ろ過砂、ろ過砂利がフィルターのような役割をしているのですね。
砂利の間に濁りがたまらないように、3日に一度は下から上に水を流す逆流洗浄を行って、砂利そのものもきれいに洗っています。
砂の層を通して細かな水の汚れを取り除いた水は、塩素で消毒されて配水池へ。こうしてようやく、きれいな水を家庭へ送ることができるのです。
浄水場の地下にある「配管ルーム」へ!
地上から浄水場を見下ろす形で見学してきましたが、最後に地下へ潜入してみました。ここは普段公開されていない、配管ルームと呼ばれる場所です。
浄水場の地下には、なにやらたくさんの管が! ここには市内各地に水を送るポンプやバルブなどの機械設備や、それらに電気を送ってコントロールするための電気設備が集まっています。
故障すると水が送れなくなってしまい、家庭で水道水が使えなくなる可能性も。定期的に点検や補修を行って、安全を守っています。
最初は濁っていた水でしたが、3時間かけてきれいな水に大変身! その仕組みと、裏側である地下の様子はいかがでしたか? 身近な水道水は、実はこんな旅をしていたのですね。