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神戸の街の地下を走るえんの下の力持ち、「大容量送水管」って?

水道局の裏側体験ツアー③地下50m!? 大容量送水管・立坑たてこう見学ツアー

水道局の裏側体験ツアーの最終回となる第3回の舞台は、なんと地下50mの世界! 地下深いところを走る送水トンネル「大容量送水管」は普段の生活では目に見えないけれど、なくてはならない大切な存在。まさにえんの下の力持ちとして活やくしてくれている、巨大な送水管のすぐ近くまで潜入してみました。

 

“普通”を守るために、神戸の水道は強くなった!

集合したのは、兵庫区にある浄水統括事務所じょうすいとうかつじむしょ

「みなさんは、朝起きたらまずは歯磨きしますよね?水道の蛇口じゃぐちをひねると水が出る。それってきっと、当たり前のことですよね。実は神戸市で給水が始まったのは123年前のこと。今となっては水道水が出るのは普通のことですが、その“普通”を守るためにはいろんな仕組みがあるんです」

そんな職員の言葉から始まったこの日は、まず映像を見ながら神戸の水道水の基本情報を学ぶことに。

▶︎大容量送水管でますますパワーアップ! ~おいしいね!安心だね!神戸の水道~(11:28)

映像はこんなふうに、クイズ形式で進みました。ちなみに写真の答えは2番。神戸の水道水の3/4は琵琶湖と淀川からやって来たものです。

それらはこれまで六甲山の下を通る2本の送水トンネルで神戸まで運ばれてきましたが、約20年もの歳月と371億円をかけた大工事を経て、2016年に3本目の送水トンネルが完成しました。それが、今回のツアーで実際に近くまで見に行く「大容量送水管」です。

「大容量送水管には、これまでの2本の送水トンネルにはない大切な役目があります」と職員。それは、水道水を運ぶだけではなく“貯める”という機能です。

大人の身長よりもずっと大きい直径2.4mもの送水管。大地震などの大きな災害が起きた時には、巨大なタンクのように水道水を貯めることができるんです。ちなみに長さは全長12.8km。その中に貯めることができる水道水は、およそ5万9000m3。これは神戸市民全員に1日3リットル×12日分相当の水道水を配ることができる量! 驚きですよね。

「3本目の送水トンネルを作ろうとした理由は、これまでの2本が古くなったから。暮らしに必要な大切な水道水は絶対に止めることはできないので、古いものを修理するには3本目が必要と考えたんです。そんな時に阪神淡路大震災が起こり、神戸の水道は大きな被害を受けて水道が使えなくなりました。これまでの2本の送水トンネルと同じように六甲山の下を通るように計画されていましたが、災害に強い水道を作るために震災の翌年から計画を大きく変更したんです」

そう、水道水を貯められるという新たな役割をつけたのは、神戸の震災がきっかけだったんです。これまでの2本の送水トンネルとは離れた市街地の地下に通し、大容量送水管とこれまでの送水トンネルを繋(つな)ぐことや配水池(浄水場できれいにした水をためておく施設)へ水道水を送れるようにすることで、災害時に配水池に水道水が送られずに起こる大きな断水を防ぐことができるという仕組みです。

どんな時も、蛇口をひねると水道水が出る。そんな「普通」の暮らしを守るために、神戸の水道は進化してきたんですね。

 

奥平野浄水場を通って、いざ地下の世界へ!

大容量送水管を見に行く前に、奥平野浄水場も見学しました。水道水がきれいになる仕組みは以前のレポートにもまとめましたので、ぜひご覧ください。

▶︎昨年のツアー記事:安心して飲める水道水に生まれ変わる、3時間の“水の旅”

https://kobe-wb.jp/kids/archive/water-safety/

そしていよいよ、「大容量送水管奥平野給水拠点」へ。送水管につながる縦に掘った穴「立坑たてこう」の中を、地下50mまで下りていきました。

 

震災を教訓にした、災害に強い水道づくり

大容量送水管があるのは、地上から一番深いところ。階段をゆっくりと下りながら、送水管にたどり着くまでの各フロアで、震災と水道の関係などをあらためて学びました。

「神戸の震災の時は、水道が復旧するまでに3ヶ月間もかかる地域がありました。神戸市水道局庁舎も地震でペシャンコにつぶれてしまったんです。私は当時まだ小さな子どもでしたが、給水活動をするタンク車を母と一緒に追いかけた記憶があります」と職員。

飲み水だけでなく、お風呂やトイレなどにも必要な水道水は、まさにみんなの命を支える存在。震災当時は、全国からのタンク車が応援にやって来てくれたんですよ。ちなみに職員は、昨年台風の被害を受けた静岡県にタンク車で駆けつけて、震災時の恩返しをしたそうです。

震災で壊れた管路や弁も展示されており、あらためて当時の被害を目の当たりにしました。

災害に強い水道づくりに日本でいち早く取り組めたのは、災害を経験した神戸だからこそ。神戸市では、大容量送水管の立坑たてこう6カ所を含む、災害時に水道水を貯めて応急給水ができる「災害時給水拠点」を62か所設けています。

災害時は給水車(タンク車)が交通渋滞の影響を受けることもあります、これらの場所では、そういった影響を受けずに、市街地内の身近な給水拠点として応急給水をすることができます。

「この62カ所の給水拠点は、市内の約2kmの範囲に一つある計算です。これも震災時の経験から、重い水道水をなんとか運べる距離として割り出したんですよ」

 

いよいよ地下50m、大容量送水管を発見! 

神戸の市街地の地下を走る大容量送水管。同じく地下を走る地下鉄などを考りょして、地下50mの深さまで掘り進めて管がめ込まれました。

大容量送水管は、まず立坑たてこうという大きな円の形をした穴を掘ります。円の大きさは10m、市内に6カ所の立坑たてこうを掘りました。さらに横にも穴を掘り進めて、隣の立坑(たてこう)とつないで大きなトンネルを作ります。地震に強い丈夫な素材で作っているため、大きな地震があっても安心です。

さて、立坑たてこう内の地下8階にあたる50mまで下ると、いよいよ大容量送水管の先端部分が現れました。

職員の背丈と比べても、その大きさが伝わるかと思います。一見、大きな黒い球体のようですが、この奥に12.8㎞もの送水トンネルが芦屋市境まで続いているのです。実際に触ってみたり、耳を当ててみたり。話を聞いて想像していたものよりも迫力満点の大容量送水管に、子どもたちも驚いていました。

立坑たてこうの中には減圧弁(水道水の圧力を一定の圧力に調整をする弁)や送水用ポンプなど、色々な設備があちこちに。高低差を利用しながら、高い水圧で東から西へと水を送っています。

「明日、何があるかわかりません。水道局ではこうして万全の対策をとっていますが、いざという時にはみなさんが協力して、上手に水道水を使うことが大切です。家に帰ったら、ぜひおうちの近くの災害時給水拠点を探してみてくださいね」と職員。

わたしたちの暮らす街の地下で活躍する大容量送水管。神戸の水道を守る欠かせない存在なのです。

▶︎お近くの災害時給水拠点はこちらから探せます

https://www2.wagmap.jp/kobecity/PositionSelect?mid=23